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大阪高等裁判所 平成5年(ネ)71号 判決

控訴人(附帯被控訴人)

コック食品株式会社

右代表者代表取締役

田中稔

右訴訟代理人弁護士

松本誠

被控訴人(附帯控訴人)

南出文子

右訴訟代理人弁護士

山本忠雄

主文

一  本件控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。

1  控訴人は被控訴人に対し、金八八八万八〇五六円及びこれに対する平成二年七月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被控訴人のその余の請求を棄却する。

二  本件附帯控訴を棄却する。

三  訴訟費用は一、二審を通じてこれを一〇分し、その四を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。

四  この判決は第一項の1に限り仮に執行することができる。

事実

第一申立て

一  控訴の趣旨

1  原判決中、控訴人の敗訴部分を取り消す。

2  被控訴人の請求を棄却する。

二  附帯控訴の趣旨

1  原判決を次のとおり変更する。

2  控訴人は、被控訴人に対し、金一九四六万九〇七四円及びこれに対する平成二年七月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。

1  四枚目裏一二行目と一三行目を次のとおり改める。

「(二) 被控訴人の右手中指は用廃ではないので、後遺障害についての労働基準監督署長の認定は行き過ぎた認定である。」

2  五枚目表二行目末尾の次に「また、休業期間は、長くても最後の入院の退院時までとすべきである。」を加え、同二行目と三行目との間に次のとおり加える。

「(四) 弁護士費用は、本件が債務不履行責任の事案であるところから、被控訴人の負担とすべきである。」

3  五枚目裏四行目の「本件機械の」の次に「停止ボタンが目の前にあり、被控訴人は一日に何回も押しており、しかも、停止ボタンを押さずに機械が動いている状態で異物を取るのは非常に危険であることを認識していたのに、」を、同八行目の「過失相殺」の前に「九割の」を加える。

4  同九行目と一〇行目との間に次のとおり加える。

「3 損益相殺

被控訴人は労災保険から、その主張の外に、休業特別支給金六五万五四八二円、障害特別支給金四〇万五七〇四円の給付を受けているから、この金額についてもさらに損益相殺されるべきである。」

5  六枚目表四行目の末尾の次に「被控訴人としては、控訴人会社で働く先輩の指導に従って作業していて本件事故となったものであり、したがって、過失相殺を行うとしても一割程度が限度である。また、労災保険からの休業特別支給金と障害特別支給金は、労災保険法二三条の労働福祉事業の一環として労災補償特別支給規則に基づいて支給されるものであるから、損害填補を目的としたものではないので、損益相殺の対象とはならない。」を加える。

第三当裁判所の判決理由

当裁判所は被控訴人の請求は主文第一項1の限度で理由があり、その余は失当と判断するものであるが、その理由は次のとおり付加、訂正するほかは、原判決の理由説示(ただし、九項を除く。)のとおりであるから、これを引用する。

1  六枚目表一一行目の「尋問の結果」の次に、「、原審における検証の結果」を加え、七枚目裏一行目の「一時半すぎ」を「二時前」に改め、同七行目の「午後三時四〇分ころ」の次に「(そのころはそれほど忙しくない時間帯であった。)」を加え、八枚目裏一一行目の「及び(人証略)」を「、原審(人証略)及び当審(人証略)」に、九枚目表七行目の「事実は」を「事実が」に改め、同裏一行目の「受けたこと」の次に、「、また、原審及び当審における被控訴人本人尋問の結果によれば、現在の被控訴人の右手は中指が内側に曲がっていて動かず、人差し指と中指が用廃であること」を加える。

2  一〇枚目表九行目から同裏六行目までを次のとおり改める。

「3 後遺障害による逸失利益 八六三万五三一〇円 以上認定の事実によれば、被控訴人は、本件事故に遭わなければ、昭和六三年六月二三日以降六七才までの一八年間にわたり就労可能であり、その間を平均しても、少なくとも、当裁判所に顕著な事実である昭和六三年賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計女子労働者全年齢の平均年収二五三万七七〇〇円程度の収入を得ることができたものと推認されるところ、本件事故により労働能力を二七パーセント失うに至ったものと考えられるから、これによる逸失利益の同日当時の現価を、右金額を基礎として、ホフマン係数(一八年につき一二・六〇三)を乗じて計算すると、八六三万五三一〇円となる。」

3  一一枚目表二行目の「安易に判断せず、」の次に「また、その時間帯は忙しくなかったのでもあるから、」を加え、同七行目の「一七八九万六〇六四円」を「一八三七万三二〇四円」に、「三割」を「四割」に改め、同一二行目と同裏一行目の「(人証略)」の次に、「、(人証略)」を加え、同裏七、八行目の「一二五二万七二四四円」を「一一〇二万三九二二円」に、同九行目の「九五九万一三七八円」を「八〇八万八〇五六円」に改める。

4  同裏九行目と一〇行目との間に次のとおり加える。

「なお、労災保険から支給される休業特別支給金と障害特別支給金は災害補償そのものではなく、療養生活援助金、治癒後への生活転換援護金の色彩の濃い性質のもので、災害労働者の福祉の増進を図ったものであるから、被控訴人についても損益相殺の対象にはならないものと解するのが相当である。」

5  同一〇行目と一三行目の「九五万円」を「八〇万円」に改め、一一行目冒頭に「安全配慮義務違反の責任を問い損害賠償を求める場合においても、訴訟遂行のため弁護士を委任した時は債務者に対し弁護士費用を請求できるものと解せられるところ、」を加える。

第四まとめ

そうすると、被控訴人の請求は、控訴人に対し、金八八八万八〇五六円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成二年七月二七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は失当である。

よって、これと異なる原判決を右のとおり変更することとし、附帯控訴は理由がないので棄却することとする。

(裁判長裁判官 中川敏男 裁判官 北谷健一 裁判官 小松一雄)

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